著名な神社仏閣が数多い鎌倉だが、あまり知られていない寺院にも面白さはある。
今回は江ノ島に程近い腰越にある2つの寺院の話である。
- 満福寺
満福寺は真言宗大覚寺派の寺院で聖武天皇の命により東大寺の大仏建立の指揮を執った行基が744年に開山したと言われている。
この満福寺は「義経ゆかりの寺」と呼ばれている。
その理由は、源平合戦最後の壇ノ浦の戦いで平氏一族に勝利した源義経は、朝廷から官位を無断で授かったことなどが兄の頼朝から疎まれたために頼朝が政治を執り行っていた鎌倉に入ることを禁じられた。
鎌倉に入ることができなかった義経が留め置かれたのがこの満福寺であり、ここで義経は頼朝に宛てて自らの無念を綴った手紙を書いた。それがのちに腰越状と呼ばれたもので頼朝の側近大江広元を通して頼朝に届けられたが握りつぶされ、結局義経は京へと戻ることになるのだった。
寺の境内の裏には鎌倉七里ヶ浜霊園があり、そこからは片瀬海岸を一望することができる。
- 龍口寺
江ノ電江ノ島駅・湘南モノレール湘南江ノ島駅から徒歩すぐの場所にあるのが龍口寺である。
ここには鎌倉時代には龍ノ口刑場という処刑場があった。
日蓮宗の開祖である日蓮が『立正安国論』を執筆して鎌倉幕府に奉呈したがこれを理由に幕府は日蓮に死罪を申し渡し、1272年にこの龍ノ口刑場で処刑されそうになったが刑の執行寸前に江ノ島の方角から光の玉がやって来たため執行が中断されたという伝説がある。
そのご日蓮の弟子の日法がここに龍ノ口法難霊跡というとして敷皮堂を建立したことが龍口寺の始まりだとされている。
鎌倉の寺院の面白い点は京都や奈良の寺院のように宝物や重要な仏像がたくさんあるという寺院は少ないが、由緒が長かったり面白いエピソードを持つ寺が多いところだと思う。電車から降りて、あてもなく歩いて巡ってみるのも面白いだろう。
それでは今回はこの辺で。