SHIINBLOG

現金10000円だけ持って香港4日間滞在した話(前編)

海外旅行に行くのは7,8年振りだった。近年は専ら青春18きっぷで鉄道で国内を巡るのに専念していたので久々に海外に行きたいと思い、そこで香港に白羽の矢が立ったわけである。

あのときはまだ、極限状態になるとは知る由もなかったのであるが…

 1日目(9月10日)

台風15号の影響で成田空港に繋がる交通が混乱しているということだったので、予定よりも早目にリムジンバスに乗り、成田空港第二ターミナルに向かった。

空港でお金を引き出そうとATMに向かい、キャッシュカードを入れると

このカードでは取扱いできません

というメッセージとともにカードが吐き出されてしまい、何度やっても結果は同じ。

これは「完全にカードの磁気が逝ってしまった」と思ったが、まったくその通りらしい。クレジットカードは財布にそのキャッシュカードを含めて2枚持っていたが、もう片方のカードの方にはキャッシング枠の設定をしていなかったので完全に詰み。

正直かなり焦ったがここまで来たら引き返すわけにはいくまい。

というわけで、頼みの綱は1枚のVISAカードと10000円の手持ちだけで、私は香港に向けて出発したのである。

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成田空港から香港国際空港まではほぼ5時間のフライト時間である。

飛行機はほぼ定刻通りに香港国際空港に到着。

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香港は一国二制度に基づく中国(中華人民共和国)の特別行政区という少し特殊な立場であるので入国ではなく「入境」という表現をするのだが、手続きとしては大陸の入国審査と殆ど変わらない。

入境審査は問題なく通過し、無事に香港の地を踏むことができた。

空港の両替所で所持金の10000円をすべて香港ドルに換え、652ドルになった。

まぁこれぐらいあれば何とかなるか…と思った。

香港は狭い地域である故公共交通機関が発達しており、MTR(港鐵、地下鉄や近郊鉄道のこと)やバス、スターフェリー(後述)、トラムなどは全て八達通(オクトパスカード)というプリペイド式のICカードで乗ることができる。またMTRについてはオクトパスカードで乗れば現金で切符を買うより運賃が割り引かれる。

オクトパスは事前に用意していたので100$をチャージし、市街地へ向かう。

 

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空港から市街地への移動方法はエアポートエクスプレス(機場快線)、エアポートバス、タクシーの方法があるが、一番安く移動できる方法は空港のバスターミナルからS1またはS56の路線バスに乗って東涌(Tung Chung)駅まで移動し、そこからMTR東涌線に乗って市街に向かうという方法である。

 

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MTRの路線図

 

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東涌駅バスターミナルに掲げられたデモのスローガン

東涌駅のバスターミナルに着くとすぐに先日から続いているデモのスローガンが掲げてあるのが見えた。香港市街でも地下道の壁など至る所でこのようなスローガンやメッセージが貼ってあるのを目にした。またデモ隊と警官隊との衝突時の混乱によって閉鎖されたMTRの出入り口もあった。

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東涌線

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東涌線の車内

香港MTRの車両は1車両が25mと日本の一般的な通勤車両よりも長く(日本では18mあるいは20mが主流)、連結部の通路が広く取られているので一つのチューブのような構造になっているのが特徴的である。

東涌線の茘景(Lai King)駅で荃湾線に乗り換え尖沙咀(Tsim Sha Tsui)駅で降りる。

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私の予約しているゲストハウスはこの尖沙咀の彌敦道(Nathan Road)に面する重慶大廈(チョンキンマンション)にあった。

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重慶マンションの入口

重慶大廈は1960年代に建設された5つのブロックから形成される複合ビルである。ここはゲストハウスなどの安宿が多く入るビルとして広く海外のバックパッカーたちに知られており、沢木耕太郎のベストセラー小説『深夜特急』の舞台にもなった場所である。

フロントはここのCブロックの15階にあるのでエレベーターで昇る。なお、エレベーターは2基あるが偶数階に止まるものと奇数階に止まるもので分かれている。(ちなみに、香港の回数表示は英国式であるので、1階をGFと表示し、本来の2階を1Fと表す。)

 "Garden Guest House "と書かれた扉を入るとインド系と見られる男性がフロントにいたので予約している旨を伝えると

「あぁ、今これ食べてるからそこで座って待ってて」

と机に置いたタッパーに入っているものをムシャムシャ食べながら言った。

おいおい、何食ってんだよ…と若干不安になりながらも数分経って先方が食べ終わると、宿帳に氏名国籍パスポート番号を記入し、宿泊費を支払う。

私は宿泊費はクレジットカードが利用できると思っていたのだが(予約完了メールには現金かクレジットカードでの支払いと書いてあった)、"Can I use a credit card?"と聞いたら即座に"No,cash only"と言い返された。理由を聞くと「こっちにはその用意はない」という趣旨のことを言われた。

こちらとしても若干不服であったが、他にあてがある訳でもないので予約メールに記載されている3泊分の代金315$+サービス料等を含めた378$を現金で支払った。

これで持ち金の半分以上持っていかれたじゃん!明日からどうするんだよ!

そうは言ってもこればっかりは背に腹は代えられぬ。落胆しながら案内された部屋に入った。

 

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重慶マンションのシングルルーム

これが今回の根城である。

狭さと言えば、まぁ独房に近いレベルではあるがプライバシーは保たれる。

机に載っているのは部屋に通された後でセブンイレブンで買ってきたチャーハンと青島ビールである。

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これで30$前後だった気がする

コンビニは確実にクレジットカードが使えるので持ち金を気にせず買い物ができる。

セブンイレブンで買ったチャーハンをかきこみ、青島ビールで流し込む。

長い間移動してきたので美味く感じた。あとチャーハンの量が意外と多かったので満足。

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備え付けのシャワー・トイレ

一応部屋の中に温水の出るシャワートイレは備え付けられている。

これだけあれば十分すぎるだろう。ちなみに私が大阪に泊まったときは1泊1800円のドミトリーのゲストハウスで、フロントでは日本語すら通じない宿もあったのでそれに比べればマシである。

食事を済ませた後、シャワーを浴びて眠ることにした。

さて、明日からはどうやって1日を過ごすか……というのは次の朝起きたら考えようと思った。

(続く)