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現金10000円だけ持って香港4日間滞在した話(後編)


前回からの続きです。 

 

mineharu.hatenablog.jp

 2日目(9月11日)

2日目の香港のは朝は5時過ぎに起床した。

実は、本来の予定であれば昨年開通した広深港高速鉄道に乗り、中国大陸側の都市深圳に向かう予定であったのだが、圧倒的な現金不足ということもあり予定変更して香港島に向かうことした。

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香港の略図

香港は大きく分けて香港島、九龍、新界の3つの地域に分けられる。なお重慶マンションのある尖沙咀は九龍に入る。また香港島と九龍の間の海峡は維太利亞港(Victoria Harbour)と呼ばれ、世界でも屈指の船舶の出入りが多い港である。

前回の記事で少し触れたスターフェリーは九龍の尖沙咀香港島の中環(Central)・ 湾仔(Wan Chai)の間のビクトリアハーバーを通って渡る船のことである。

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スターフェリー乗り場

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船室から見る香港島の高層ビル群

スターフェリーは1乗車2.7$と日本円で30円ちょっとで乗ることができる。香港は公共交通機関の料金が本当に安いので、移動のオタクにとってはありがたい。10分ほどでビクトリアハーバーを渡る。

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国際金融中心(第二期)、香港で2番目に高い(415m)ビル

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中央が香港上海銀行香港本店ビル、左端が中国銀行タワー

尖沙咀の対岸である香港島の中環、金鐘は香港のビジネスの中心地である。東京で言うところの日本橋や丸の内といった感じだろうか。

ここで香港島を東西に走るトラム(路面電車)に乗車する。香港のトラムは珍しい2階建ての車両が走っていて観光名物としても知られる。

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トラムとダブルデッカーの路線バス

トラムは1乗車2.3$でこれまた激安である。中環からトラムに乗って東(下図で下の方)に向かう。

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香港トラムの路線図

香港トラムは1909年に筲箕湾(Shau Kei Wan)と堅尼地城(Kennedy Town)の間が開通し、1912年から2階建て車両の運行が開始された。香港の日本占領や1970年代後半のMTR開通など、何度か境地に立たされたトラムだったが、香港の市民の支持を得て今日に至るまで路線は存続している。

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春秧街

途中で間違えて春秧街という停留所で降りてしまったのだが、ここは生鮮市場のような通りのど真ん中をトラムが通っていくという迫力のある通りだった。

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鰂魚涌(Quarry Bay)にある益昌大廈(Yick Cheong Building)


トラムを乗り継いで、東の終点筲箕湾(Shau Kei Wan Turminus)に到着した。

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筲箕湾

 トラムの車両は殆どが非冷房車であるので常に車内は蒸し暑い。しかし、道路を走っているとたまに心地よい風が2階席にまで吹いてくる。しかし、ガタガタ揺れるトラムの2階から見る香港の街並みは面白い。ちょっとしたアトラクション感覚である。

筲箕湾の停留所の周りをぶらぶらしてまたトラムに乗り込み、今度は来た路線を引き返し西に向かう。

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堅尼地城

トラムを乗り継ぎ、西の端の終点堅尼地城に到着した。これで東西を走る香港トラムはすべて乗り通したことになる。しかし、まだ跑馬地方面の路線はまだ未乗である。

ここからまた中環方面に戻るのにトラムに乗っても良いが、流石に暑さにやられつつあったので堅尼地城からはMTR港島線に乗って戻ることにした。

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 MTRは駅・車内とも冷房が利いていて涼しいので非常に快適である。

堅尼地城から中環駅まではトラムだと40分程かかるが、MTRだと10分弱の距離である。

中環に戻り、そこから路線バスで香港島の反対側の香港仔(Aberdeen)へと向かう。

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香港仔

香港仔は香港島の南部に位置する街である。

「香港」の名の由来は古くはここに香木を貯めておく港があったことにあるという説がある。またそのような理由から太平洋戦争時に日本が香港を占領した際には日本名として「元香港」という地名が付けられた。

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香港仔のビルにあるマーケット街

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香港仔の高層住宅


香港仔は中環や金鐘といったビジネス街とはうって変わって下町のような雑多な感じがする庶民の集まる街という印象を受けた。

香港仔をぶらぶらした後は渡船に乗って対岸の鴨脷洲に渡り、MTR南港島線の利東駅から湾仔に戻る。

湾仔に戻るとほぼ日が暮れていたので、行きのようにスターフェリーでビクトリアハーバーを渡って尖沙咀まで戻った。

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九龍の尖沙咀から見た香港島の夜景

香港の夜景は函館、ナポリと並んで「世界三大夜景」と呼ばれる。

ちなみによく謂われる「100万ドルの夜景」という文言はどうやら電気代の総額のことを指すらしい。無論、現代の値段ではなくあくまで昔の基準なのであるが…

ここで香港滞在2日目がほぼ終了した。ここまで、現金を使ったのは殆どオクトパスカードのチャージのみである。その他は全てクレジットカードでの支払いで済ませている。

2日目を乗り切ったら「案外現金なしでもイケるな…」と謎の自信がついてきた。前にも話したが、香港は公共交通機関の料金が劇的に安いのが便利な点である。オクトパスカードの残額を絶やさなければ暇を潰すことはできる。

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2日目の夕食

今晩の食事はサークルK(OK便利店)で買った煮豚(?)のようなものの乗ったご飯の弁当である。今日の弁当もなかなかボリュームのあるもので美味しくて満足。まぁ酒が入っていれば何を食べても美味いという身も蓋もない話…

取り敢えずこれにて2日目は終了。まぁ明日のことは明日考えようといういつものスタンスで就寝した。

 

3日目(9月12日)

部屋の扉をノックする音で目が覚めた。8割ぐらい頭が死んだまま扉を開けると、どうやら係の人間がバスタオルを交換しに来たらしい。

時計を見たら11時を指していて驚いた。確かに廊下には11時にチェックアウトという張り紙がしてあったのを思い出した。前日に歩き回っていた疲れが出て12時間近く寝てしまっていたのだ。

この日はMTR観唐線に乗って九龍塞城公園に行くことにした。

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九龍塞城公園

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九龍塞城(九龍城塞)の復元ジオラマ

九龍城塞とは10世紀の中国の宋の時代に建造された城塞が起源であるが、1960年代から70年代にかけて急速に違法建築のバラックが集積して城塞のように発達して「一度入ったら出られない」と呼ばれるまでに巨大化した。また、当局の規制が及ばなかったために麻薬の売買や売春、賭博等の非合法活動が横行した。

しかし、1984年に英国と中華人民共和国の間の声明によって1997年に中華人民共和国に香港を返還することが決まり、九龍城塞を取壊して住民を移住させる計画が確定した。

九龍城塞が取り壊される直前の1990年代初頭には0.026㎢の面積に5万人もの住民が集中するという人口密度にして190万人/㎢という驚異的な数字になったという。

ちなみに日本の長崎沖にある、かつては炭鉱で発展した端島(軍艦島)の人口密度は最盛期の1960年で83,600人/㎢(東京23区の人口密度のおよそ9倍)であった。

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現在となっては城塞の跡地はこのような小綺麗な公園になっていて、当時の様子をうかがい知ることは難しい。

しかし、城塞の周辺は現在でも九龍城(Kowloon City)という名前になっている。

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九龍城の街並み

九龍城周辺を散策した後はまた香港島に渡り、昨日乗らなかったトラムの残りの路線である跑馬地(Happy Valley)方面に乗りに行った。

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跑馬地

トラムは香港島を東西に結ぶ路線に加え香港では著名な競馬場である跑馬地馬場(ハッピーバレー競馬場)を周回する路線がある。

跑馬地は香港島の山に面した地域で、山麓には高級住宅街が広がっている。

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跑馬地の街並み

跑馬地は九龍側のアジア特有の猥雑な街並みとは違い、ヨーロッパの都市を思わせるような街並みが印象的であった。

日が暮れて尖沙咀に戻り、今晩は最後の晩餐と思い奮発して香港ローカルのファストフードである大快活(Fairfood)に入った。

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注文時にこの円盤の裏側にあるコードを注文端末にスキャンし、机に置く

店の中にあるタッチパネル端末から注文するシステムなのだが、支払いの前に端末の横にある円盤を端末の読み取り部にスキャンし、自分のテーブルの所定の位置に置くことで、店員さんが自分のテーブルまで食事を持ってきてくれるという画期的なシステムらしい。

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注文したチキンカレー

これが私が注文したチキンカレー(46$)である。

香港には他にもいくつかローカルファストフードがあり、独特のメニュー展開をしている。

私はこの店ではオクトパスカードで支払った。香港のファストフードでは殆どがオクトパスでの支払いに対応していると思う。

香港でのオクトパスの普及はすさまじく、理髪店での支払いやショッピングセンターのガチャガチャに至るまであらゆる場所での利用が可能である。

実はオクトパスはソニーが開発した非接触カードの規格であるFeliCaを1997年に世界で初めて交通系カードで採用したのである。2018年現在では香港人口のおよそ5倍である3300万枚のオクトパスカードが発行されている発行元の会社は発表している。

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オクトパス対応のガチャガチャ

 さて、話を戻すとチキンカレーはまずまず美味しかった。

連日コンビニの弁当だったこともあったのだろうが、香港ローカルのお店で食事をとることができたのでよかった。流石に最後までゲストハウスの部屋でコンビニのものだけで済ませるのは気が引けると言うのが正直なところであった…

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廟街夜市

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廟街夜市

これでなんとか3日目も無事に終えることができた。

さぁ、明日はほとんど飛行機に乗って帰るだけである。しかし、また今日のように爆睡しているとフライトの時刻に間に合わなくなる恐れがあるので今夜はスマホのアラームを複数設定して寝ることにした。これで異国の地で野垂れ死にすることはなくなった。安心である。

 

4日目(9月13日)

昨日の絶望の起床を繰り返すことはなく、朝の7時頃にはしっかりと目覚めることができた。

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尖沙咀の九龍公園

尖沙咀を軽く散策した後で、行きと同じルートでMTRとバスを乗り継いで空港に向かった。

これは香港到着時には気づかなかったのだが、ターミナルの出発ロビーに入るときに入り口前にいる係員にパスポートと航空券を見せないと空港内に入れないようになっていた。これは昨今続いているデモの影響で、一時は空港内が占拠される事態も発生していたためだと思われる。

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出発ロビー

セキュリティチェック・出境審査ともに問題なく進み、搭乗口へと向かう。

搭乗口のフロアで飲み物を買い、最後まで残っていた香港ドルを殆どすべて使い切った。

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フライトは何事もなく、19時過ぎにほぼ定刻通りに成田国際空港に到着し日本への帰国を果たすことができた。

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帰国

これによって私の「所持金10000円で香港4日間」旅行がひとまずの終わりを迎えたのである。

こうなったすべての原因はキャッシュカードの磁気が壊れていることに出発当日まで気づかなかった私の鈍さに尽きるのであるが、久しぶりの海外旅行で初めての海外一人旅を楽しむことができたので結果的にはよかったと思っている。

今回の失敗であるが、このようなピンチに陥らないようにするために海外旅行の際は海外キャッシングサービスを受けられるようにすること、そして何よりキャッシュカードの磁気を駄目にしてしまわないように気を付けることを学べた、と前向きに考えたい。

私は近いうちに、また香港旅行にリベンジしたいと思っている。今度は行きたいところにも計画通りに行けるように。

これを読んでいる方も、海外旅行の際は(特に一人旅の場合)お金周りのことはちょっと気を付けて、出発するのが賢明であると思う。

 

前回の記事に引き続き長文になったしまったが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。

それでは今回はこの辺で。