SHIINBLOG

私鉄特急

去年はどうやら7回しか記事を更新しなかったらしい。

Twitterは―今となってはXと言う向きもあるそうだが―相変わらず動かしているのでご無沙汰の方は少ないかもしれないけれど、一つ言い訳をすると自分の生活環境が大きく変わってブログの方まで気が回らなくなってしまった、ということだけは言わせてほしい。

特急小江戸

さて、私は昨年の7月末から移住して東京都民になったのだが、そのおかげで西武線をよく使うようになって西武新宿線の特急「小江戸号」をよく使うようになった。

小江戸号は有料特急だが、以前住んでいた沿線は特急も普通のきっぷで乗れる電車だったためいちいち特急券を買って乗るというのは遠出したときぐらいだったが、何回か使っているとこれが案外快適だということに気が付いた。

私が通常乗る区間は西武新宿から東村山で、たかだか20分ぐらいなのだが、やっぱりリクライニングシートに座って移動できるというのは大きい。

西武線の特急は池袋から所沢を通って秩父方面に行く「ちちぶ号」と西武新宿から所沢を通って川越まで行く「小江戸号」があるが、ちちぶ号の方は数年前に「Laview(ラビュー)」という銀ピカの弾丸のような新しい車両が投入され、そっちはカーペット敷きだったり窓が大きかったりと新しさを感じる一方で「小江戸号」に使用される車両は投入されてから30年近く経った車両なので、さすがにLaviewより陳腐な感じがするのは否めない。

しかし、私はその陳腐さがかえって心地よく感じるので嫌いではない。どことなく車内に漂う悲壮感が武蔵野の郊外を駆ける路線に合っているのかもしれないとも思う。

 

私が好きなもうひとつの有料特急は東武伊勢崎線の「特急りょうもう号」だ。

私鉄特急はだいたい先の西武の「ちちぶ小江戸号」や箱根や江ノ島に向かう小田急の「ロマンスカー」のように観光地・行楽地に向かうものが多いが、特急りょうもう号は関東平野をひたすら北上し群馬県の赤城まで向かう電車である。はっきり言って先述の観光特急と比べれば地味な電車と言わざるを得ない。

もっとも、特急りょうもう号は以前は「ビジネスライナー」と呼ばれていた時期もあったことからもとよりビジネス目的での利用を念頭に置かれていることから、観光特急のような楽しさはないことは仕方がないのかもしれない。

そしてりょうもう号も小江戸号に似ていて30年近く前に投入された車両を未だに使用している。

私は群馬県太田市に親戚の家があるので家族でりょうもう号を使うことが度々あったためりょうもう号には親しみがある。

車窓は太田までかなり単調ではっきり言ってつまらないのだが、幼少期の私は始発の浅草の駅の売店で駅弁を買ってもらって食べてなんかいると、なんだかいかにも旅行をしている気分になって好きだったのを覚えている。

若干陳腐化した居心地の特急で、単調な関東平野を北上するあのけだるさ、憂鬱感に似たあのなんとも言えない空気はあの電車の醍醐味と言えるだろう。

 

「旅情」という言葉があるが、旅情をかきたてるのは雄大な自然や歴史のある町並みだけではなく、小江戸号やりょうもう号の車内のような形容し難いけだるさにもあるのではないだろうか。

そういう余計なことも考えられるから、旅行するのは楽しい。