SHIINBLOG

降車専用

私の実家では日曜日の夕方にサザエさんを見る習慣がなかった。

その前のちびまる子ちゃんを見る習慣もなく、日テレの笑点を見る習慣もなかった。

理由は単純明快で、両親がそのいずれの番組も嫌いだからというだけであるが、自分から具体的に何故嫌いなのかということは訊いたことがない。

私が両番組が嫌いな理由は明白で、前時代的な家族観を何十年も引きずっていることの面白さがまったく分からないからである。

いわゆる「昭和的」なパターナリスティクな家庭観・価値観に成り立っているあの2番組が今日に至るまで一般の支持を得ているのか私にはまったく分からないが、疲弊した世の中に一種のノスタルジーを呼び起こさせる存在というのは必要であるのかもしれない。

 

サザエさん」『ちびまる子ちゃん』が「昭和的」な家族を投影しているとしたら「平成的」な家族を投影するアニメは何かということを考えてみると『あたしンち』『クレヨンしんちゃん』がまず頭に思い浮かぶ。

サザエさん』は昭和の世田谷区が舞台であるが『あたしンち』は練馬区クレヨンしんちゃん』は春日部市が舞台であり、いずれも郊外のベッドタウンという昭和後期~平成前期に確立された生活スタイルが背景となっている。なかでもクレヨンしんちゃんの舞台である埼玉県春日部市は、市内に東京圏を一周する国道16号があり、東京都心へ通勤する人々のベッドタウンとして戦後に興隆した町でもある。

春日部市は『クレヨンしんちゃん』の人気のお陰で相当町おこしに成功しているのは夙に知られるところである。

ただ、私の興味はアニメよりも、東京都心から離れた郊外の発展が東京、ひいては首都圏にどのような影響を及ぼしたかというところである。このテーマは様々な視点から捉えることができるのが面白いと私は思っている。大学在学中もこのテーマを取り上げてはみたが、私の至らなさがゆえになかなか上手くまとめることができなかった。

 

あたしンち』のアニメは数年前に終了してしまったが『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』は未だに続いている。

私がいつも思っているのは、このような長寿アニメといわれる作品がいつまで続くのかということだ。多くの人が「ずっと続くだろう」と思っていることに末恐ろしさを感じるのである。昨今のできごとを例に挙げれば、あれだけテレビや映画などのエンターテインメント界において幅を利かせていたジャニーズ事務所も現在では一瞬にして崩壊の一途をたどっている。いつまでも残り続けるものなどは夢物語であり存在しないのである。

 

そもそも、ここ数年の間に急速にテレビ(番組)の力が失われていったように感じる。

10数年前、スマートフォンが台頭し始めるようになってから、インターネットが急速に身近に感じられるようになったが、これほどまでにテレビが衰退すると予測できた人はいただろうか。テレビは子供と老人のもの、と言われたこともあったが、今では小学生でもスマホを持っている時代である。テレビそのものがなくなることはまだないであろうが、確実に過去のものになっていると言わざるを得ないであろう。

 

私も一人暮らしを始めてから、テレビこそ家にはあるものの全くと言っていいほどテレビ番組を見なくなった。

代わりに見始めるようになったのはプロ野球である。まさかこの歳になって野球にのめり込むようになるとは思わなかった。きっかけは今年のWBCである。

まず驚いたのは、地上波放送でのプロ野球中継の少なさである。私の子供の頃はまだ地上波で野球中継をしていた記憶があったが、まず日常で地上波でプロ野球中継をすることはほぼなくなった。やっていてもBS放送である。毎日プロ野球の中継を見るためにはインターネット配信にお金を払うか、CS放送にお金を払うしかないのである。今日で野球は確実に老若男女全世代のものではなくなっている。

 

ここまで色々書いてきたが、最後に、ただ一つ言えるのは、プロ野球を見て無尽蔵にストレスを溜めるよりはアニメを見た方がよほど精神衛生上いいだろうということである。