SHIINBLOG

知床無情

今までの人生で一度も新幹線に乗ったことのない人は少ないと思う。

新幹線に乗るときに、別にこれは新幹線じゃなくてもいいのだが、座席のリクライニングを倒す前に後ろの人に一声かけるという、文化というか気づかいみたいなやつが個人的にはやる方もやられた方もどうも苦手なのである。

別に勝手にやってもらって全然構わないのだが、特に最近は物騒な世の中で電車内での傷害事件も起きているので、もしかしたら後ろから刺されたなんてことがあるかもしれないと思って、必要以上に気を使うこともあるだろう。

 

私がゼミで教わっていた教授は名古屋から東海道新幹線で東京の大学まで通勤している人だった。

その先生曰く、後ろの人に声をかけてから座席を倒す文化は平成初め頃から、西の方から東の方に向かって波及していった文化だということだった。

どこまでこの話の起源が明確であるかは不明だが、そういう何気ない習慣も意外と最近できたものだと知ると面白い。

 

1994年6月1日に放送された古畑任三郎の「殺人特急」というエピソードがあって、鹿賀丈史が演じる医者の男が自分の浮気疑惑を調査していた興信所の所長を特急列車の中(ちなみに私はこれを書いているときにWikipediaを見るまで新幹線の中だと勘違いしていた)で殺してしまう話があるのだが、ここでも鹿賀丈史が勝手に座席を倒して後ろの客に睨まれるというシーンが登場する。

さっきの先生の話と照らし合わせるとこれは一声かける文化が浸透し始めたからこそのシーンなのかと捉えることもできる。

 

その中で古畑が犯人役の鹿賀丈史と特急列車の売店で話すシーンがあって、最近は新幹線や特急列車の食堂車やビュッフェが殆どなくなってしまっているのでかなり時代を感じるシーンの一つである。最近は車内の自動販売機ですらなくなっているところもあるというのだから、殺人事件は起こらなくていいが、随分殺風景な旅路になっているのではないだろうか。