SHIINBLOG

光と風と正夢

杜氏は納豆を食べることができないという話を聞くと大概の人間は納得したような顔をするが、殊にアイドルの恋愛に至ってはそうではない人間もいるようなのである。

杜氏というのは日本酒を造る職人の集団で、特にその棟梁を指す場合が多いが、古くは日本酒を発酵させる際には口噛み酒といって人が噛んでその唾液の作用で発酵させる場合があったので、納豆のような強い菌の発酵食品は酒を造る際に差し障りがあるということである。

 

「文春砲」なんていうのがまるで時代の寵児のような扱いを受けているのを見るとマスメディアへの露出が多い人々というのは如何に一般大衆が当然のように享受できる権利を平気で攻撃してくるので圧倒される。

アイドルにおける「恋愛禁止」という概念は、今に始まった話ではないが、これももう長いこと騒がれている話でありこの先も多分解決することはないだろうが、一般人の感覚から言えば人権侵害も甚だしいと感じざるを得ないところはあるだろう。

しかし先述の「杜氏は納豆を食べられない」という話に通底する部分はあるのではなかろうか。すなわち、職務上はやむを得ない規則という点で考えれば、極端に理不尽な規制ではないという話である。

 

アイドルというのは感情労働の極北であって大変難しい仕事だというのは想像に難くない、という話を先日の記事で書いた。

人並みの生活から離れ、芸能界という摩天楼で衆目に晒され、自らのあらゆる情報を切り売りして大金を得るというのは、相当異常な職業でありながらも魅力的に感じてしまう人が多いのだろう。

 

「政治家も選挙で落ちればただの人」と言った人がいたが、アイドルというのも政治家に似た職業である。

大衆に愛想を振りまき(媚びを売り)、雇用は決して安定しているとは言えないがその代わり莫大な金を得ることができる。芸能事務所を退社し芸能界を引退すればただの一般人である。

 

アイドルおたくは、アイドルに夢を見させられているのか、それともアイドルがアイドルおたくに夢を見させられているのか。

夢と幻想と現実の境を限りなく霞めることのできるアイドルが、本物のアイドルなのだろう。